臨床工学科
臨床工学科
Dept. of Clinical Engineering
「いのちを守るエンジニア」として
医学と工学をベースとした
医療機器のスペシャリストとなり
最先端医療に欠かせない人材を育成する

臨床工学科について

本学科では医学の基礎となる解剖学、生理学を徹底的に学修し正常な人体の構造と機能を理解します。この基礎医学の知識をベースにして様々な疾患の成り立ちや治療法を学ぶ臨床医学を理解していきます。同時に、工学の知識と技術を学び医療機器に関する専門知識を修得していきます。
実習室には病院内で使用されている様々な医療機器が用意され、学年を問わず医療機器に触れることができ、いつでも自分の手にとり操作することができます。
2021年、医師の働き方改革による医師業務の「タスク・シフト/シェア」により、鏡視下手術における内視鏡の操作や心臓カテーテル治療における電気的刺激を加える操作などが、臨床工学技士の業務範囲に加わりました。臨床工学技士に対する社会のニーズがますます高まっている中、それに対応するべく本学のカリキュラムも、さらなる充実を図りました。
実習に使用する機材も業務範囲の拡大に対応して、内視鏡を含めたシミュレータをいち早く導入。現場でのハイレベルな要求にも対応できる実践力を養います。

臨床工学技士とは

医療技術の進歩に伴い、医療機器の高度化・複雑化も進む一方です。臨床工学技士は、血液透析装置や人工呼吸器、人工心肺装置など、いのちを守る医療機器(生命維持管理装置)の操作、保守・管理を行う医療機器のスペシャリストです。

社会のニーズ

臨床工学技士制度が誕生したのは1987年と比較的新しいですが、現代医療に不可欠な医療機器を効率的に運用し安全性を確保することでチーム医療を担っており、活躍の場が広がっています。例えば、心臓手術では人工心肺装置を用いて、手術の間、患者様の心臓の働きを人工心肺装置で代行します。その他にも手術中には様々な医療機器を駆使して手術をしています。これらの医療機器が安全・確実に作動しているか、異常はないか確認するのも臨床工学技士の重要な仕事です。また、異常が起こる前にその予兆を察知する能力も臨床工学技士には要求されます。
時には医療機器について医師や他の医療スタッフから相談を受けることもあり、専門知識とコミュニケーション能力を活かして、チーム医療に貢献しています。また、腎臓の機能が悪くなった患者様には血液透析装置を用いた治療を行いますが、週3回1日3~4時間の治療となるため患者様と直接触れ合う機会が多く、医療機器の操作だけでなく患者様の状態の変化を敏感に察知し対応することも大切です。患者様とのコミュニケーション能力と高いスキルで信頼を得ることが重要です。
集中治療室では心臓や肺を始めとした重要臓器と全身の状態を把握するための計測機器や様々な治療機器が用いられ緻密な治療が行われます。呼吸状態の悪い重症な患者様には人工呼吸器を用いて呼吸補助を行い、循環動態の悪い患者様には補助循環装置を用いて治療を行います。それぞれの医療機器は患者様の命と直結しているので、トラブルが起こったときには医療機器を熟知している臨床工学技士の迅速な対応が要求されます。
昨今の新型コロナウイルス感染症による重症な肺炎の治療に使用されるECMO(体外式膜型人工肺)等の操作・管理やトラブル対応は臨床工学技士が担っています。これらだけではなく、病院全体で医療機器を適正に効率よく運用するため、病院内の医療機器や設備を把握することが重要です。医療機器のあらゆる場面で臨床工学技士が関わり、新たな医療機器の導入から古い医療機器の廃棄の際もアドバイスを行っています。日本で活躍中の臨床工学技士は医療の現場で必要とされている数に対して圧倒的に少ないのが現状です。
薬事法、医療法の改正により、医療機関に医療機器を安全に使用し管理する体制を確保するための措置を取ること(臨床工学技士を中心とした機器管理体制の確立)が義務付けられ、臨床工学技士に対する社会のニーズがさらに高まっており、多くの若い人材が必要とされています。

取得可能資格

臨床工学技士(国家試験受験資格)
第1種・第2種ME技術者

活躍のステージ

大学病院、国公立・市立病院、総合病院、一般病院、クリニック、医療機器メーカ(サービスエンジニアなど)、教育(臨床工学技士養成校など)・研究機関 など

履修の流れ・カリキュラム
履修の流れ
カリキュラム
学びの特色と実習内容
学びの特色
医療機器の操作や保守点検だけでなく、医療経済やリスクマネージメント、医療機器の研究・開発など、医療業界をリードしていくことのできる人材の育成を目標としています。基礎科目では解剖学・生理学などの基礎医学を学び、それらの基礎医学を基に様々な疾患の原因や症状に関する臨床医学を学びます。さらに、疾患の治療や診断に用いる工学技術が人体にどのような影響を及ぼすのか、その効果とともに副作用についても学ぶことで、安全で良質な医療を提供するために必要なスキルを効率よく身につけることができます。また、大学教育の特性を活かし社会人として、さらには医療人としての資質を高め、コミュニケーション力を磨き、臨床工学技士の立場からチーム医療への関わり方を学びます。
授業風景動画
実習内容
臨床工学科の実習例
学内の設備・医療機器を用いた学内実習により、講義で学修した内容と併せてより実践的なスキルを修得します。4年次に実施される臨床実習では臨床における臨床工学技士の位置づけや役割、具体的な業務の流れを理解するとともに、将来医療に携わる臨床工学技士として必要なモラルとマナーを身につけます。
学内実習
血液浄化装置学実習
腎臓の機能を代行する血液透析装置や血液透析に必要な水処理装置などの構造・操作法について実習を行います。また、1日の業務をシミュレートし血液透析の施行法を修得します。さらに、各種血液浄化療法の施行方法についても実習を行います。
呼吸療法装置学実習
換気機能を代行する人工呼吸器の原理や構造、操作法、保守点検法、安全管理について実習を行います。また、酸素マスクなどの酸素を用いた酸素療法についても実習を行い、呼吸療法全般にわたるスキルを身につけます。
体外循環装置学実習
心臓手術の際に心臓と肺の機能を代行する人工心肺装置や、心不全の際に心臓のポンプ機能を補助するPCPSやIABPなどの補助循環装置に関する原理や構造、操作法、また保守点検法、安全管理について実習を行います。
医用治療機器学実習
現代の医療では様々な工学技術を応用した治療機器が臨床で応用されています。電気メスや除細動器、ペースメーカ、輸液ポンプなどの治療機器の構造・操作法・性能評価法を工学系科目と関連付けながら実習を行います。
生体計測装置学実習
診断に使用される心電計や脳波計、患者様の状態(バイタルサイン)をチェックする生体情報モニタ(ベッドサイドモニタ)など、計測に使用される機器の構造・操作法・性能評価法を修得します。
臨床工学科の年次別臨床実習
年次 前期 後期 目的/方法 時間
(単位)
4年次 臨床実習   目的:①既習の知識・技術をもとに、臨床工学技士の業務全般にわたる留意事項と具体的な業務について実践できるよう、実際的な場面を通して知識・技術を身につける。
②生命維持管理装置について業務の流れの中で実際の適用とその意味を理解し、臨床工学技士としての実践力を身につける。
③医療の安全管理の重要性と安全確保の実態を知り、安全確保を実践することができる。
④実習体験を通し、将来医療に携わる臨床工学技士としての基本的なモラルとマナーを身につけ、医療者としての行動ができるようにする。

方法:埼玉県内及び近隣の病院に学生40名を振り分け、5週間の実習を行う。
実習の内容は以下のとおり。
①血液浄化装置実習
②集中治療室(人工呼吸器を含む)
③手術室(人工心肺装置を含む)
④医療機器管理業務実習
⑤その他。
270時間(6単位)

設備機器
内視鏡シミュレータ
開腹せずに手術を行う、内視鏡下手術における内視鏡の操作も、臨床工学技士の業務になりました。本学ではいち早く内視鏡シミュレータを導入し、現場でのハイレベルな要求にも対応できる実践力を養います。
手術室エリア
臨床工学実習室1に設けられた手術室エリアには、麻酔器や電気メス、人工心肺装置など実際に手術室で使用されている様々な医療機器が設置され、いつでも臨床工学技士業務のシミュレーションができるようになっています。
ECMO(体外式膜型人工肺)
通常の人工呼吸器では治療が難しい重症な呼吸器疾患の治療に、体外循環と人工肺を用いたECMOが用いられます。昨今の新型コロナウイルス感染症による重症肺炎などの治療に威力を発揮しています。ECMOの操作・管理やトラブル対応は臨床工学技士の仕事です。
人工心肺装置
心臓外科手術において心臓を開けなければならない手術(開心術)のとき、一時的に心臓と肺の機能を代行する生命維持管理装置です。
血液浄化システム
腎臓の機能を代行する生命維持管理装置である血液透析装置をはじめ、血液透析に必要な水処理装置や透析液供給装置などから構成されているシステムです。各種血液浄化装置も設置されています。
人工呼吸器
換気能力の低下によって炭酸ガスの排出と酸素の取り込みができなくなった場合に換気を代行する生命維持管理装置です。
電気メス・超音波凝固切開装置
現代の手術では不可欠な医療機器で、電気メスは高周波電流を生体に流すことで組織の切開、血液の凝固(止血)などに使用される治療機器です。超音波凝固切開装置は超音波振動を利用して組織の切開や止血などに使用される治療機器です。
除細動器
致死的な不整脈(心室細動や心室頻拍など)に対して電気的なショックを与えることで、正常な心拍リズムに戻すための治療機器です。
解析機能付デジタル電計
心臓から発する電気信号(心電図)を様々な角度から記録し、心臓の機能を評価・異常の発見をするための計測装置です。
在学生インタビュー
学科長

幅広い分野で活躍できる
臨床工学技士になりたいです。
そのために日々の授業を
集中して臨んでいます。

臨床工学科 3年
静岡県立浜松湖南高等学校 出身

N.H.

日本医療科学大学に入学した理由ときっかけを教えてください
国家試験合格率が高いところに魅力を感じたのがきっかけです。
臨床工学科の魅力を教えてください
他の医療従事者が触れる機会の少ない医療機器が扱えることだったり、病気や怪我の診断ではなく、実際に治療に携われることも魅力の一つです。
最も印象に残っている授業(実習)とその内容を教えてください
生体計測装置学実習という授業です。実際に心電図や脳波、血圧を測定することにより、それらを測定するために使用する医療機器の操作や動作原理を学ぶことができました。1年次に座学で学んだ知識を実践することでより理解を深めることができました。
授業(実習)の中で苦労したこと、そこから学んだことがあれば教えてください
覚える項目が多いことに苦労しました。毎日の予習や復習を理解するまで行なう様にしています。
将来の目標を教えてください。また、目標のために現在頑張っていることは何ですか︖
幅広い分野で活躍できる臨床工学技士になりたいです。そのために日々の授業を集中して臨んでいます。
学科長挨拶
学科長

医療現場の第一線で活躍してきた教員と充実した設備のなかで、医療機器のスペシャリストを育成します

臨床工学科長

中尾 教伸 教授

臨床工学技士は、人工呼吸器など生命維持管理装置の操作をはじめ、様々な医療機器の保守管理、病院内の教育活動など業務は幅広く、現在の医療現場ではなくてはならない存在となっています。最近の医用工学・医療技術のめざましい発展に伴い、内視鏡や心臓カテーテルによる検査・治療補助といった分野にも業務の範囲が広がっており、今後も益々活躍の場が広がると期待されます。本学科は、医療機器のスペシャリストとして活躍できる人材を育成するため、医療現場の第一線で活躍してきた熱意溢れる教員と、医療機器実習のための充実した設備やカリキュラムを整えています。是非、本学の臨床工学科で学んで夢を叶えていきましょう。